#1 ニューラルマーケティング株式会社
「規模じゃない、ニューラルの“熱意”にすべてを託した」ファミリー企業を守り抜くために決断した、オーナー企業M&Aのリアル。

上田雅史
ニューラルマーケティング株式会社 専務取締役
元お笑い芸人という異色のキャリアを持ち、2019年に家業へと帰還した上田専務。家族経営からの脱却、そして相続税や個人保証というオーナー企業特有の切実な課題を乗り越えるため、同社が選んだのはニューラルグループへの参画でした。激変する環境の中で、社員を誰一人欠かすことなく組織をホワイト化し、さらには今年、生え抜き社員が新社長に就任するという「理想的な世代交代」を実現。オーナー企業のリアルと、グループイン後の未来への展望について伺いました
お笑い芸人からの転身と、家族経営の中で迎えた方針転換
私はもともと、お笑い芸人としてキャリアをスタートさせました。21歳の時には『笑っていいとも!』などのテレビ番組にも出演させていただき、当時はそのまま芸人の道で生きていこうと心に決めていたんです。一方で、自身で飲食店などのビジネスを立ち上げ、若くして経営のシビアさを肌で経験してもいました。
転機が訪れたのは2019年、創業社長である父が60歳を迎えるタイミングでした。
社内では以前から事業承継の話が出ており、当時は前身の会社で東京支店の立ち上げなどを経験した後に一度離れていた私の兄と、芸人をやっていた私が、言葉には出さずとも「同時に戻って、2人で親父の会社を支えよう」と同じ未来をイメージしていたんです。そのタイミングが綺麗に合致し、2019年に揃って入社することになりました。
しかし、いざ中に入ってみると、家族経営特有の難しさがありました。事業以外の部分、いわゆる家族としての感情が経営に持ち込まれることでの衝突が絶えなくなってしまったのです。結果として、兄が再び会社を出るという選択をすることになりました。父の中では、元々「兄弟2人で力を合わせて事業を継承していく」という絶対的な絵図があったため、そのうちの1人がいなくなったことで、従来の親族へのストレートな事業承継という選択肢は事実上消滅しました。そこから、M&Aという新たな挑戦が始まりました。

家族経営ゆえの相続税・個人保証の壁、そしてニューラルの「熱意」を選んだ理由
最初にM&Aという選択肢を父から聞いた時は、驚きよりも「そうだろうな」という納得感が強かったのを覚えています。というのも、ある程度の規模にまで成長したオーナー企業をそのまま親族や社内メンバーに譲ろうとすると、外からは見えない非常に重いリアルなリスクがのしかかるからです。当時の私たちが直面していた課題は、大きく分けて2つありました。
1つは「巨額の相続税リスク」です。会社の企業価値が高く評価されていた分、それをそのまま親族間で相続しようとすると、実質的に数十億円規模の現金を相続税として支払わなければならず、引き継いだ瞬間に会社が巨額の借金を背負う過酷なシナリオが存在していたのです。
もう1つは、信販会社を通した取引に伴う「重すぎる個人保証のリスク」です。数十億円にのぼる債務の個人保証はすべて代表取締役個人が負うため、社内の優秀な社員に事業承継をしようとしても、身内以外にそれほどの莫大なリスクを背負わせることは、経営者として父には到底できませんでした。
その結果、会社と社員を守りながら持続可能な会社として維持するためには、強固な基盤を持つパートナーに事業とともに責任も引き受けてもらうM&Aが最も合理的だったのです。
ありがたいことに、大手メーカーや投資ファンド、同業他社を含め、数多くの高額なオファーをいただきました。しかし、ファンドによる短期的な売却前提の運用や、同業他社により主導権を握られて自社の歩みが消えてしまうリスク、あるいは既存の営業部門が解体されてしまう懸念など、どれも「共に歩んできた社員の幸せ」を脅かす可能性が残るオファーでした。
その中で選んだのが、当時は規模としては当社よりも小さかったニューラルでした。借金をしてまで、共に大きな未来を創りたいという経営陣の圧倒的な熱意と覚悟、泥臭い根性を父が見抜き、「この会社ならすべてを託せる」と確信して統合を決めました。

社員が誰一人辞めなかった移行期と、労働環境・採用の劇的進化
グループインすることは、経営の立場として社員に大きな変化を強いる自覚もありました。昨日までとはガラリと環境が変わるわけですから、社員は皆大きな不安があったはずです。私はとにかく「ここから絶対に良くなるから」と、その一点だけを実直に、言葉を尽くして伝え続けました。
結果として、当時の上層部を含め、社員は誰一人として会社を辞めませんでした。創業社長である父は退任しましたが、私を含めた既存のマネジメント層が誰一人抜けずに現場に残って伴走したことで、連鎖的な不安を防ぎ、強い安心感を与えられたのだと思います。
グループインしてからの変化は、まさに劇的なものでした。まず、元々は土曜出勤もある変則的な週1日〜隔週休みという労働環境だったところから、上場グループの厳格なコンプライアンスに則り、完全週休2日制へと移行しました。有給休暇も適切に消化できるようになり、社員の満足度と安心感は格段に上がりました。この週休2日制への移行と同時に「ニューラルマーケティング」へと社名を変更し新たな一歩を踏み出しました。これが採用面でも爆発的な効果を生み、求人への応募数が劇的に増加し、採用が上手くいくようになりました。
また、グループとしての潤沢なバックアップを得たことで、M&A前から温めていた複数の新規事業部を立ち上げることもできました。以前の体制では踏み込めなかった大手法人マーケットに対しても、上場グループの信用力を背景に、営業のアクセルを踏めるようになったのは非常に大きなシナジーです。
もちろん、上場ルールや数字に対する徹底的なコミットなど、「失敗ができないプレッシャー」という新たな緊張感は生まれましたが、組織がより成熟し、プロフェッショナルとして一人一人が進化するために必要な変化だと前向きに捉えています。

生え抜き社長の誕生と、グループ経営の未来へ
そして今年、当社は大きな節目を迎えました。社内の叩き上げであり、長年現場を支えてきてくれた生え抜き社員の石垣さんが新社長に就任し、私が専務としてその戦略を支えるという新体制へと移行したのです。
かつての「創業社長による強力なトップダウン経営」から、M&Aを経て「上場グループの仕組みを用いた組織経営」へ変わり、そして今回、現場を誰よりも知るリーダーがトップに立つ。これこそが、M&Aがもたらした理想的な世代交代と仕組み化の形だと自負しています。
社員にとっても、「自社で愚直に実績を積めば、上場グループの主要企業のトップに立てる」という、これ以上ない大きな夢を示すことができました。
また、グループ企業が増えていくことで、独立したオーナー同士では明かせない裏側を、グループという信頼できる仲間のなかで率直に共有し、助け合える。どこか一つの企業が沈めば全体に連鎖するからこそ、全体を良くしようという高い視座が自然と身につきます。今後は、まだ見ぬ未知の分野の企業がグループ入りした際にも、私自身の成長機会として積極的に経営参画していきたいと考えています。
M&Aを検討されている多くの経営者の方は、事業の頭打ちや社内改革の限界、あるいは私たちのような親族承継の壁など、様々な悩みを抱えていると思います。もし「自分たちだけの力では、これ以上のスピード感を持って社員を幸せにできない、事業を次のステージへジャンプアップさせられない」という課題が一つでもあるのなら、M&Aは最高の選択肢になります。
すべての責任を一人で背負い込む必要はありません。信頼できる仲間と大きな責任を分かち合いつつ、自分たちの強みを活かして事業のアクセルを踏む。その決断が、会社を何倍も強くします。
ぜひ、私たちと一緒に、新しい未来を創りましょう。
